出世欲コントロール研究所

会社員最後の難題「出世欲コントロール」。戦え、支配せよ。戦いはまだ始まったばかりだ。Written by Ultraboy.

「オフィス=畜舎」に出勤するメリット

 イケダハヤトさんがまた煽っている。社畜が「会社+家畜」なのであれば、社畜が通うオフィスは「畜舎」であるというわけである。まあ、その通りでしょうね。どちらかというと会社員ライフ肯定派の僕も、オフィスに決まった時間に出勤しないといけないというルールは不要だと思う。時間が人間にとって最高の資源であるなら、その資源を無駄に使うのがオフィス出勤というシステムの最大の罪である。 

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  とはいえ、僕はオフィス通いで重要なことを学んだような気がしている。要するに、オフィスに何を求めるか、である。オフィスには人間関係の清濁があふれており、頭でっかちの学生(つまり僕のような人間)が成熟するのには絶好の鍛錬場だ。少数の例外を除いて、オフィスでは公正も正義も大義名分でしかない。入社した当初はそれで頭にきたことが多かったが、オフィスは社会の縮図である。人間とはこういうものだ(そしておそらく自分もそういう人間のひとりだ)という認識を血肉化することができる。何をするにせよ、そういう認識からスタートするしかないのだ。入社1年目の秋、ドストエフスキーの「地下室の手記」を読み直しながら、空白に次のような文句をいつも書きつけていた。

「自分はいま理不尽と共にあるか? あるのなら安心するがいい。自分はいま世界に触れている」

 確かにイケダさん(とみんなが呼ばないのはどうしてだろう?池田信夫がいるから?)の言うように、業務遂行の視点で見ると、オフィスに人が集まると「ロクでもないこと」が起きる。ちなみにイケダさんが挙げている「ロクでもないこと」リストは以下の通り。僕にとっては、昼寝ができないのが一番きつい。

・通勤は多大なストレスであり、時間の無駄。その時間に仕事しろよ……って感じ。
・オフィスは騒音と介入の嵐。集中して仕事はできない。
・オフィスは出会いと創造性を奪う。
・オフィスに出社すると、勤務時間中の休憩(昼寝)が取りにくくなる。
・オフィスに集まると、人は無駄な会議を始めたがる。
・オフィスに集まると、無駄な人間関係のトラブルが発生する。
・オフィスがあると「時間稼ぎ」をする怠惰な人が現れる。
・「オフィス族」は、家族や自分の体調が崩れたとき、会社を休まざるを得ない。
・オフィスと通勤は会社の運営コストを跳ねあげる。
・オフィス出勤はスタッフの人生を縛る。
・などなどなど……。

  しかし一方で、オフィスはよく知る人間が次々と登場し戯れる「舞台」である。慣れるとおもしろいことを発見できる。時々、三谷幸喜の映画を見ているような気分になる。人間の強さと弱さ、ちょっとした良心と圧倒的なエゴ、人間関係の清濁を背景に、それぞれの人間が舞台の上で踊っている。もちろん僕も踊る。チャップリンも言っている、「人生は悲劇だが、遠くから見ると喜劇である」と。オフィスも同じである。「オフィスは悲劇だが、遠くから見ると喜劇である」。

 この認識を人に押し付けようとは思わないが、ことほどさように、オフィスに数年間通ってみるのも別に悪いことではないような気がする。自分で決断するべきは自分で決断すること、そしてその決断によって生じた結果は自分で引き受けること。この2点さえ守っていれば、失敗して傷ついてもいずれ傷は塞がるし、胸の内には痛みの記憶とともに教訓が残る。教訓は、頭でっかちの学生(まあつまり僕ね、しつこいけど)をそれなりに成熟した大人にしてくれる。僕はその道を通ってきてよかったと思っている。今後、同じ道を進むかどうかは考えどころだけれど。